ギリシャ神話に登場する、知恵と戦いの女神アテナ。天から人々を見届けており、傲慢なものあらば容赦なく制裁を加える。しかし時として困っているものには知恵を授け、背中を後押ししてくれる存在である。そんなアテナをモチーフにした曲を読み解く試みをしました。
youtu.be (VOCALOID5のCYBER DIVAさん。すごく黄色。)
◆曲「ATHENA」の和訳
The moment is right, so don't wait And plan your attack |
絶好の機会をのがしちゃダメ 私がいいって言ったら、戦う準備をして あなたを躊躇(ためら)わせる束縛を解いて、立ち向かえ 攻撃の策を巡らそう |
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Brace yourself and run into the battlefield Move on. Don't falter. Plan your pursuit And charge on in head on I will be your shield Go on. Release the goddess inside you! |
覚悟ができたら戦場に飛び込め 前を向いて先へ。怯(ひる)まないで。あなたの大事にしたいものを想像してみて 知性の能力をもって、あなたの身を護る盾になろう
さあ 内なる女神を解き放て! |
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In every star In every moon In every vena There lives Athena |
消え入りそうな星にも かけた月にも どんなに細い血の通り道にも アテナは宿る |
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In every star In every moon In every vena There lives Athena |
消え入りそうな星にも かけた月にも どんなに細い血の通り道にも アテナは宿る |
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In every star In every moon In every vena There lives Athena |
消え入りそうな星にも
かけた月にも どんなに細い血の通り道にも アテナは宿る |
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From the deepest oceans to the shallow shore You will hear her cry The goddess of war |
光の届かぬ海の底から 波打ち際まで[+どこに居たって]
勝利の女神の 力強い声が届くだろう |
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From the deepest oceans to the shallow shore You will hear her cry The goddess of war |
光の届かぬ海の底から 波打ち際まで
勝利の女神の 力強い声が届くだろう |
◆和訳補足
訳を作るときに、
○命令文のオンパレードであるが、厳しさが出ないようにする
○女神らしく、しなやかな美しさと知性を感じられるようにする
というのを心がけたつもり。
以下、ブロックごとに分けて、英語の歌詞と訳出するときのプロセス。
Get ready to fight, when I say
Break free of the chains
That hold you back React
And plan your attack
that 以下は主語が抜けているから関係代名詞で…みたいなことをやってました。合ってるんかいな
Move on. Don't falter. Plan your pursuit
And charge on in head on I will be your shield
Go on. Release the goddess inside you!
※Plan your pursuit
直訳したら「追求したいものを計画せよ」
じゃあ意味が通らないので、なんとかなんとか丸めて
「あなたの大事にしたいものを想像してみて (創造もアリかも) 」としました。
※And charge on in head on I will be your shield
文構造がとれなかったので、少々後ろめたい訳になりました。2通りの訳がでてきたんだよ。
①知性の能力をもって、あなたの身を護る盾になろう
And charge /on in head / on I will be your shield
引き受ける 知性のありかを あなたの身を護る盾として
⇒アテナの頭脳的な能力をもって、あなたの身を護る盾になろう
②真正面からぶつかっていけ あなたの身を護る盾になろう
And charge on / in head on / I will be your shield
charge=体当りする, 突撃する
head on =正面から
構造的には②のほうが はちゃめちゃです。でも単語つなげたらこういう訳もできて違和感がない…気がする。
In every star
In every moon ×3
In every vena
There lives Athena
「すべての星、すべての月」という非常にサッパリした訳が、はじめにポンとでてきたのですが、あまりに情緒がないので
every=個々にザラッと目を通して、ひとくくりとしている意識
ということで、
「一つ残らず、見落としそうになる弱い立場のものたちも」
の訳が持ち上がってきました。
そういえば、星は明るいものもあれば暗いものもあり、
月は完全に満ちた月もあれば、不完全な形のものだってある。
vena(血管、静脈)は、全身に送る、主となる太い血管もあれば、 体の末端まで血液を送り届ける細い網目のような血管もあり。
ここは、人々が存在すら気づかないようなものたちに、目を向けているのだ、という解釈になりました。
You will hear her cry The goddess of war ×2
※ From the deepest oceans to the shallow shore =もっとも深い海から浅い岸辺まで
⇒光の届かぬ海の底から波打ち際まで
物語っぽく意訳しました。
先のeveryの「一つ残らず」の意識で考えると、
深い海は光が届かないし中にあるものはわからない。逆に浅瀬は水が澄み切って、奥まで見通せる。見えないようなところまで女神は見通している。(意味が通った!)
※You will hear her cry The goddess of war
''cry''ってなんのことを叫んでる、もしくは泣いているんだろう、と考えたときに、
①一行上に、海のことを書いている。
「泣く」の訳をとって、「ザザーン ザザーンと寄せては返す海の音って、女の人がすすり泣いてるみたいね。それは女神の涙を流す声なのよ」
という解釈が浮かびました。でもギリシャ神話の女神って、膝を折って「ヨヨヨ」と泣くような女人はあまり居ないのです。ましてアテナは、気高く 気の強い描かれ方をしています。
曲中でも人々を救う立場に立っていることから、cry=泣くではないと思いました。
②そうなると、cry=叫ぶのほうが適当かもしれない。じゃあ、なんのことを叫んでいるんだろう。あっ
(以下 一部抜粋)
The moment is right, so don't wait Get ready to fight, when I say Break free of the chains That hold you back React And plan your attack |
絶好の機会をのがしちゃダメ 私がいいって言ったら、戦う準備をして あなたを躊躇(ためら)わせる束縛を解いて、立ち向かえ
攻撃の策を巡らそう |
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Brace yourself and run into the battlefield Move on. Don't falter. Plan your pursuit And charge on in head on I will be your shield Go on. Release the goddess inside you! |
覚悟ができたら戦場に飛び込め 前を向いて先へ。怯(ひる)まないで。あなたの大事にしたいものを想像してみて 知性の能力をもって、あなたの身を護る盾になろう
さあ 内なる女神を解き放て! |
これだ、この大量の命令文で始まる文章たちを、強く叫んでいるんだ。考えてみれば、歌詞を内容によって大きく分けたときに、
1,女神が叫んでるメッセージのようなもの(上の四角で囲ったパート)
2,女神がいる場所(In every star…のeveryがたくさん出てくるパート)
3,まとめの伝えたいこと(おわりの2文)
となると思う。そこで、「叫び」は、あなたを力づけるメッセージを叫んでいるのだ、としました。
※You will hear her cry The goddess of war
The goddess of war=勝利の女神 としました。アテナのついた軍は必ず勝利する、という言い伝えから。
◆曲の解釈
女神は舞いおりた。辛くて折れそうなあなたを、雲の切れ目から見つけて。
光の当たる道を歩く人たちが羨ましいと思うときもあるでしょう。女神は、日陰の人々にだって、あたたかな手を差し伸べましょう。何もかも持っている人だけが救われるわけじゃない。
心がめげて苦しい渦中にいる人々をすくい上げ、女神とともに逆境に立ち向かっていく。あなたはひとりじゃない。私がついている。
◆曲に関するおまけ(ギリシャ神話とのつながり/ 韻を踏んだ歌詞)
ギリシャ神話とのつながり
○女神アテナは、父の頭をかち割って(諸説あります)生まれた。ダイジョウブ パパは神様だから無傷です。アテナが宿って守ってくれるならば、言うまでもなく頭脳に降りてきてくれるのだろうなと思いました。
○歌詞中に「盾」の言葉が出てきたのは、戦いの女神であり、盾は一つのモチーフであること。また、神話中で窮地に陥った英雄に盾を貸していることから、あなたを手助けするものとしての象徴 と捉えました。
韻を踏んだ歌詞
英語って、意識して韻を踏む文章(声に出したときにリズムがいいこと。ラッパーを思い出してくれ)を作ることが度々あるそうな。
そこで歌詞を見てみると
The moment is right, so don't wait んと んと いと
Break ⇔ Brace ブレイク ブレイス
In every vena エヴリ ヴィナ
In every vena ヴィナ
There lives Athena アテナ
【注意】発音は耳で聴こえたものをもとに書き起こしています。
実際しゃべってみると、何となく「ああなるほど」となるかも。
◆おわりに
曲を聴いたときの身の震えるような感動は、言いしれぬものがありました。いつか英語のニュアンスをそのままに、日本語訳したいと思いつめて久年。つたない英語力を母国語の語彙で上手くカバーして、なんとか出来上がりました。慈悲深い女神の ‘‘ことば’’ を神託のごとく伝えられたらいいな、と思います。
お読みいただきありがとう。